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定期借家制度導入について

 

1999年12月15日に「良質な賃貸住宅の供給の促進に関する特別措置法」が公布されました。
この特別措置法での一番の目玉は2000年3月1日より、借地借家法の一部を改正して「定期借家契約」の導入が行われることです。
以下、「定期借家契約」の詳細と及ぼす影響について考えて行きたいと思います。


概要

従来型の借家契約では、正当事由がない限り家主の方からの更新拒絶はできず、自動的に契約が更新されることになっていました。
「定期借家契約」では契約で定めた期間の満了により、更新されることなく確定的に借家契約が終了する契約です。

 

詳細

「定期借家契約」が成立する要件や、契約内容についてもう少し詳しく見て行きましょう。

  1. 公正証書などにより契約書を作成する
    (これは必ずしも公正証書である必要はなく、契約書等の書面をもって足りるとのことです。)

  2. 家主及び代理業者は、借家人に対して契約書とは別に、あらかじめ書面を交付して「この賃貸借は更新がなく期間の満了により終了する」ことを説明しなければなりません。
    (もし説明がなければ、その契約は従来型の更新がある借家契約となります。)

  3. 定期借家契約が1年以上である場合は、期間の満了の1年前から6ヶ月前までの間に、借家人に対して、賃貸借が終了することを通知しなければなりません。
    (通知が遅れた場合、通知の日から6ヶ月は借家契約は継続します。もちろん借家人の方は期間満了後は契約を終了させる事ができます。注意して頂きたいのは、家主から通知がなく期間満了後も借家を利用する場合は、賃料は引き続き支払う義務があるという事です。)

  4. 「定期借家契約」期間中でも、以下の要件を全て満たす場合、借家人より1ヶ月前の申し入れによる中途解約が認められます。

    @居住用の建物(含む、生活の本拠としている店舗用住宅)でその床面積が200u未満の物
    A転勤、療養、親族の介護などのやむおえない事情があり、自己の生活の本拠として使用することが困難となった場合。

    (現実的には居住用に関しては、特約により中途解約の緩和がはかられると思われます。またこれ以外の特約で、借家人が不利となるものは無効となります。)

  5. 居住用の建物については、3月1日以前の正当事由による借家契約は継続され、双方の合意があっても「定期借家契約」に変更はできません。
    (事業用の建物については3月1日以降、双方の合意により「定期借家契約」に移行することができます。また居住用に関しても4年間を目処に検討されるとのことです。)


定期借家導入により何が変わるか?

定期借家導入においては、法曹界、消費者団体などから根強い反対意見が出ています。家主、借家人にとってどの様な影響が出るのでしょうか。

  1. 良質な賃貸物件の供給が増える。
  2. 不動産証券化との組み合せによる、新しい賃貸事業の創設。
  3. 高齢者住宅、転勤者住宅の市場への供給。
  4. 市場動向に即した家賃改定ルールが確立される。

    以上がメリットとして上げられています。

今まで家主は正当事由がなければ借家人に対して、更新の拒絶ができなく、認められた場合でも多額の立退き料の支払を要求され、事業化の障壁とされてきました。
「定期借家契約」の導入により、事業化の目処が付くといわれています。

また、「定期借家契約」における借家人は、正当事由の借家契約より不安定な立場に置かれるので、家賃なども相応に下がるのではないかと言われています。

反対派の主張として、弱者の切り捨てに繋がるとの懸念が示されています。家主の権限が強くなり、低所得者や社会的弱者の立場が不安定になるとの懸念です。
これについては、行政サイドの低家賃の住宅供給など多くの課題が残されています。

 

契約時の注意点

「定期借家契約」を結ぶ時に、借家人が気を付けなければいけない点とは、どういう事なのでしょう。

  1. この契約が「定期借家契約」であるとの説明を受けたか?
    (前に説明したように、期間満了により更新のない契約との説明がない場合、正当事由による借家契約となります)

  2. 礼金、権利金などの一時金に対する説明を受けたか?
    (建設省では礼金、権利金と言った一時金は、従来型の借家契約がもつ不確実性を担保する意味から慣行となった金銭であり、「定期借家契約」については授受を避けるものとの見解が示されています。また、敷金、保証金等はリスク担保、原状回復費に充当など合理的なものについて従前通りの扱いで良いとのことです。)

  3. 賃料等の値上げに関する説明を受けたか?
    (賃料等の改正は重要な部分ですので、十分納得のいくまで説明を求めましょう。
    以下、賃料改定の根拠となる式の参考です)

(従前の賃料ー従前の賃料決定時の公租公課等の諸経費)×変動率+現在の公租公課等の諸経費

変動率について
@国民総支出又は県民総支出の変動
A卸売物価指数、消費者物価指数又は地代家賃指数の変動
B地価公示又は都道府県地価調査

 

新しく施行される法律の常で、今後現実的に色々な問題が出てくると思われます。
「定期借家制度」が根づくかどうか、今後が非常に注目されます。
うまく機能すれば、消費者の利益も少なくない様に思いますが、当初は混乱が予想されます。
契約時は十分説明を受けて、納得してから契約するようにして下さい。

  




            契約前の説明の際に提示される説明書の参考資料です。